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『きらきらひかる』や『落下する夕方』など多数の作品で、揺れる女性の内面と恋愛模様を描いてきた江國香織の短編小説集。淡く繊細な筆致でつづられた12編は、さらりとした読みごたえでありながらも、男と女の物悲しさを秘めたものばかりだ。第130回直木賞受賞作品。
満ち足りていたはずの恋に少しずつ影が差す様を描いた表題作「号泣する準備はできていた」、妻のある男性との濃密な関係がずれはじめる一夜をつづった「そこなう」など、当たり前にそばにあるものが静かに崩壊していく過程を、江國は見慣れた風景の中に表現してみせる。また、若かりしころの自分と知人の娘の姿を重ねた「前進、もしくは前進のように思われるもの」や、17歳のときの不器用なデートの思い出を振り返る「じゃこじゃこのビスケット」では、遠い記憶をたどることによって、年を重ねることの切なさを漂わせる。
各編の主人公は、もう若いとはいえない年齢の女性たちである。家族や恋人を持ち、同性の友人にも恵まれている幸福そうな生活の隙間に忍び寄る、一抹の不安やわずかなすれ違いは、誰もが経験したことがあるだろう。主人公の心境が「残りもののビスケット」や「捨てられた猫」といった身近なものに投影されるのも、江國作品の特徴である。決してドラマチックではない日常の瞬間を切り取った物語が、シンプルながらも美しくまとめられている。(砂塚洋美)
出版社/著者からの内容紹介
体も心も満ち足りていた激しい恋に突然訪れた破局、その絶望も乗り越えてゆくよすがを甘美に伝える表題作、等12篇。濃密な江國香織の世界に浸れる待望の短篇集。
内容(「BOOK」データベースより)
大丈夫、きっと切り抜けるだろう。―体も心も満ち足りていた激しい恋に突然訪れた破局、その哀しみを乗り越えてゆくよすがを甘美に伝える表題作、昔の恋人と一つの部屋で過ごす時間の危うさを切り取る「手」、17歳のほろ苦い恋の思い出を振り返る「じゃこじゃこのビスケット」など、詩のように美しく、光を帯びた文章が描く、繊細な12の短篇。
内容(「MARC」データベースより)
体も心も満ち足りていた激しい恋に突然訪れた破局。その哀しみを乗り越えてゆくよすがを甘美に伝える表題作など、詩のように美しく、光を帯びた文章が描く、繊細で透明な12の物語。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
江国 香織
1964年東京生まれ。87年「草之丞の話」で毎日新聞社主催の「小さな童話」大賞を受賞。89年「409ラドクリフ」で第1回フェミナ賞を受賞。『こうばしい日々』で91年産経児童出版文化賞、92年坪田譲治文学賞を受賞。同年『きらきらひかる』で紫式部文学賞を受賞。2002年「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 。